統的にリスク回避的な日本の機関投資家は、ポートフォリオの大幅なリバランスを行い、記録的な速さで代替投資に移行しています。

Nick Harrold
パートナー
Maples Group

日本の大手機関投資家のいくつかは、移行の意図を公表しており、他の日本の機関投資家も後に続き始めています。日本の機関投資家に関するPreqinの最近の調査では、投資家の42%が民間債への配分を増加させ、39%がインフラへの配分を増加させ、37%がプライベートエクイティへの配分を増加させるつもりだと述べています。

この代替投資へのポートフォリオのリバランスは、何が背景にあるのでしょうか? それは、利回り、より正確に言えば、利回りの追求です。日本の銀行、年金基金および生命保険会社はすべて、流動負債を償還するために、確実な利回りを求めています。しかし、日本銀行は、政府のアベノミクス政策の一環として10年物の日本国債利回りを0%に維持しており、現地投資家の地方債のリターンは最低水準になっています。

さらに、日本株式の配当利回りは、最近では平均1.8%に過ぎません。そのため投資家は、記録的な速さで、より高利回りの代替投資へのポートフォリオのリバランスを強いられています。

では、どのような種類の代替投資が人気を集めているのでしょうか? 今日、日本の投資家に最も人気のある選択肢には、海外の株式および債券、プライベートエクイティ、民間債、インフラその他の代替投資が含まれています。

これらの中で、最もよく見られるのは、国際株式および債権へのエクスポージャーです。日本の海外株式保有額は、2012年から3倍に増加しました。

最近生じている主な傾向の1つとして、プライベートエクイティへの関心の高まりがあげられます。この資産クラスは、以前は、ほとんどの日本の機関投資家の眼中にありませんでしたが、今では多くの投資家が、これを利回り重視のポートフォリオの基本的な要素として見ています。

代替投資を行うために、どのような種類のファンド構造が利用されているのでしょうか? 代替投資の利用を希望しているほとんどの日本の投資家に選ばれている投資ビークルは、ケイマン諸島ファンドです。2016年に日本で公募された外国籍ファンドの94.3%は、ケイマン諸島ファンドとして設立されました。

日本の投資家が他のファンド籍よりケイマン諸島を選ぶ理由は、他の法域の投資家と大差ありません。この法域で設立されたビークルは、通常、柔軟性が高く、販売が迅速であり、コスト意識が高く、そしてとりわけファンド構造と法域の両方に熟知しています。

日本におけるプライベートエクイティへの新たに見つかった関心は、新たな種類のケイマン諸島投資ビークルの展開にも向けられています。それが、「プライベートエクイティ型」ユニットトラストです。この混成ビークルは、基本的に、キャピタルコール機能や不履行投資家規定などプライベートエクイティファンドのいくつかの性質を組み込んだ、ケイマン諸島ユニットトラスト(多くの日本の投資家に選ばれている投資ビークル)です。

多くの日本の投資家は、PE(プライベートエクイティ)型のユニットトラストが、ユニットトラスト構造を全般的に熟知していることに加えて、プライベートエクイティ投資を行う際に国際的な投資家によって一般に利用されているリミテッドパートナーシップ構造と比較して、税制上の利益を提供することに気づいています。さらに、多くの日本の投資家は、日本円以外が中心の投資を行うことから生じる日本円以外の通貨のエクスポージャーをヘッジすることを希望しています。

リミテッドパートナーシップ構造を利用する場合、投資から生じた損益は、関係する投資が実現するまでは認識されず、投資の実現には投資を行ってから何年もかかる場合があることを考えると、円のヘッジはより困難です。

一方、PE型ユニットトラスト構造では、実現した利益も実現していない利益も分配され、ヘッジされる日本円以外のエクスポージャーの計算目的で使用することができる流動純資産価値が存在します。

日本市場における代替投資の今後の見通しは、どのようなものでしょうか? 日本の機関投資家はすでに、多額の資産を国内債券や株式から代替投資に移行させていますが、このことが継続し、増加するという兆しが見られます。

マイナスの指標金利(-0.1%)に直面して、多くの一般の貯蓄者も同様に、外国の債権、株式および代替投資へのエクスポージャーの増加を求める可能性があります。一般の貯蓄者による代替投資への移行が生じたとしたら、これは、かなりの額にのぼります。日本では、家計の現金と預金の合計は、現在、金融資産の約52.5%を占めています(米国では13.1%に過ぎません)。

別の要因、すなわち、日本の急速な高齢化も、代替資産への移行を加速させる可能性があります。日本の人口は、世界的に最も急速に高齢化が進んでいます。人口の28%が65歳以上であり、これは、2040年までに33%超へ、2065年までに40%超まで上昇します。この急速に変化する人口構成は、多くの日本の金融機関の年間債務を一層増加させ、今後何年かで、より多くの関心がより高利回りの代替投資に向けられるでしょう。

多くの世界的な資産運用会社が、現在、世界第3位の経済大国に強い関心を示していることは、偶然ではありません。

Nick Harroldは、Maples Groupのファンド・投資マネジメントパートナーです。

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