内部通報者への報奨に関するSEBIの討議資料を分析する

By Radhika Iyer、Meher Mehta, S&R Associates
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インド証券取引委員会(SEBI)は、インサイダー取引違反の調査および決定において、数多くの課題に直面しています。多くの場合、違反の直接的または決定的な証拠の欠如が主な課題です。2019年6月10日、SEBIは、通報者制度案に関する討議資料を公表しました。この案では、内部通報者は、インサイダー取引の事実を報告したことに対して報奨を与えられることになります。

SEBI
Radhika Iyer
パートナー
S&R Associates

討議資料に述べられている制度は、ドッド=フランク・ウォール街改革・消費者保護法に基づく内部通報者の枠組みに触発されたものであるように思われます。同法は、米国証券取引委員会に、執行措置の成功につながるオリジナルの情報を自発的に提供した個人に対して報奨金を出す権限を与えるものです。SEBIの通報者制度案では、

  • 通報者は、自分自身で、または匿名で(法的代理人を通して)、自発的情報開示フォーム(VIDF)を提出することにより、インサイダー取引に関する情報をSEBIに提供することができます。通報者は、提供する情報が規制機関(SEBIを含む)の従業員から入手したものではないことを保証し、この点に関して補償を行う必要があります。
  • SEBIは、通報者とSEBIの間の媒介機関として、調査機関とは無関係の情報保護局(Office of Informant Protection:OIP)を設置します。
  • 一部の例外はあるものの、通報者の身元および提供された情報は、適切な保護対策により、ほぼ確実に秘密を保持されます。
  • 上場会社は、従業員が、直接、間接を問わず、VIDFを提出したことを理由として解雇、降格、停職処分、脅迫、嫌がらせまたは差別を受けないようにするために、内部行動規範を改正する必要があります。
  • 通報者方針を遵守して情報が提供され、信頼できる完全かつオリジナルな情報に基づいて講じられた措置の結果として少なくとも5千万ルピー(706,775米ドル)が差し出された場合、通報者は、徴収された金銭の10%(ただし1千万ルピーを上限とする)に相当する報奨金、またはこれを上回る金額が特定された場合には当該金額を受領することができます。
SEBI
Meher Mehta
アソシエイト
S&R Associates
  • 提出された情報が不真面目または濫用的なものであるとOIPが判断した場合には、SEBIは、適用法に基づいて、通報者に対する適切な措置を開始することができます。
  • SEBIは、一定の通報者に対して、規制措置の免除を与えることができます 。
  • 通報者制度の導入は、正しい方向への第一歩です。しかし、この制度の成功は、これを導入する方法を含むいくつかの要因にかかっています。さらに検討を要する一定の主要分野として、以下が挙げられます。
  • 不真面目な告発:討議資料によると、告発が不真面目または濫用的であると判断された場合には、SEBIは通報者に対する適切な措置を開始することができます。しかし、SEBIは、悪用を避けるために、不真面目な告発に対処するための効果的な手順を策定する必要があるでしょう。SEBIは、そのような告発の真相を判断するために、追加的なリソースを配備する必要があるかもしれません。
  • 秘密保持: 秘密の保持は、内部通報者保護システムの第一の要素です。しかし、SEBIは、インド内外の適切な規制当局や法執行当局、または自主規制組織と、情報を共有する可能性があります。通報者が、SEBIの手続きにおいて証人となる可能性もあります。これらの要因は、通報者制度の利用を思いとどまらせるかもしれません。匿名の告発における法的代理人の義務は、討議資料からは明確ではありません。
  • 内部通報者に関する方針: 現在、内部通報者の告発は、上場企業が適用法に基づいて策定を義務付けられている内部行動規範に基づいています。SEBIは、内部通報者が告発のために従うべきプロセスにおける混乱を避けるために、内部行動規範と通報者制度案との関係を明確にする必要があるかもしれません。さらに、SEBIは、行動規範に基づいて構成された内部コンプライアンス委員会に対する告発が、通報者制度に基づく報奨および免除規定の対象としてみなされるべきかどうかを検討すべきです。

ここ数年間で、さまざまな法域において、内部通報者によりいくつかの事件が明らかになりました。通報者制度案は現在、インサイダー取引の事件に限定されていますが、導入された場合、この制度のメリット次第では、SEBIが、これを詐欺や不公正な取引慣行の事件に拡大するよう検討することもあり得るでしょう。

Radhika Iyerは、ニューデリーとムンバイに事務所を構える法律事務所、S&R Associatesのパートナーであり、Meher Mehtaはアソシエイトです。

議決権

S&R Associates
64, Okhla Industrial Estate Phase III
New Delhi – 110 020, India
One Indiabulls Centre, 1403 Tower 2 B
841 Senapati Bapat Marg, Lower Parel
Mumbai – 400 013, India
連絡先
New Delhi: 電話 +91 11 4069 8000
Mumbai: 電話 +91 22 4302 8000
著者の電子メール:riyer@snrlaw.in | mmehta@snrlaw.in

 

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