役員報酬に関する株主の権限強化

By サンディープ・バガット、ラヤ・ハザリカ,S&R Associates
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近の株主行動主義および規制措置においては、インドの役員報酬問題に焦点が置かれています。2013年インド会社法(以下、「法律」)では、ある会計年度に公開会社がその取締役およびマネージャーに支払う経営者報酬の総額を、当該会計年度における純利益の11%以下に制限しています。最近における株主エンパワーメント(権限強化)およびコーポレート・ガバナンスの動向に合わせ、インド企業省は2018年9月に、(中央政府の承認を受ける代わりに)公開会社の株主が、11%の上限、あるいは会社が十分に、または全く利益を上げていない場合に定められている上限を上回る報酬の支払いを決定できるよう法律の改正を行いました。

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サンディープ・バガット (Sandip Bhagat)
パートナー
S&R Associates

全般的な上限に関してはさらに細かい制限が設けられています。代表取締役(MD)、常勤取締役(WTD)またはマネージャーへの純利益の5%(個人)または10%(全体)を上回る報酬、あるいはその他の取締役への純利益の1%(MD/WTD/マネージャーが該当する場合)または3%(その他全ての場合)を上回る報酬については、総会における株主の特別決議が求められます。さらに、会社が債務不履行に陥っている場合は、金融機関、非転換社債保有者およびその他の有担保債権者から事前に承認を得ることが義務付けられています。

経営者報酬に関し、株主には大きな権限が付与されています。アポロタイヤの一般株主は、2018年9月、ニーラジ・カンワール氏(支配グループのメンバー)のMDとしての再任と報酬を拒否しました。支配株主は会社の40.81%の株式を保有していましたが、一般株主から十分な票を獲得できなかったため、決議には至りませんでした。これを受け、総報酬を30%削減する(報酬総額の70%は業績ベースとする)旨の修正案が株主に提示され、2018年12月に承認されました。

上場会社においては、2019年4月1日以降、1名の社外取締役の年間報酬が社外取締役全員の年間報酬総額の50%を上回る場合、または、常務取締役(プロモーター・グループのメンバー)が5,000または上場会社の純利益の2.5%のいずれか高い額を上回る場合や、当該常務取締役の年間報酬総額が会社の純利益の5%を上回る場合は、株主による特別決議が義務付けられています。

また、上場会社は取締役会への報告書において、各取締役に対する報酬パッケージの詳細(固定報酬および出来高払い分を含む)、各取締役と従業員報酬の中央値の比率、各取締役、最高経営責任者(CEO)、最高財務責任者(CFO)、秘書役またはマネージャーの報酬増加率、および従業員報酬の中央値の増加率を開示する必要があります。同法律および上場規則においては、公開会社の取締役およびマネージャー(会社の業務の管理に責任を負う個人と定義されている)に対してのみ、報酬の制限を定めています。

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ラヤ・ハザリカ (Raya Hazarika)
アソシエイト
S&R Associates

会社は、業績やその他の基準に基づく役員報酬についても対策を講じています。最近では、大手民間銀行の取締役会にて、同行のMDやCEOが利益相反やその他の要件について効果的な対処を行わなかったと結論付けた調査報告書をもとに、これらの幹部陣に対して9年間にわたり支払われた賞与を全額回収することを発表しました。

またインド準備銀行(RBI)は、業績問題を理由に、特定の民間銀行による支払の規模に対して疑問を呈しています。2019年2月、RBIはインドの外資系銀行を含む民間銀行の役員報酬に関するディスカッション・ペーパーを公表しました。変更案においては、変動報酬を最低でも50%とすること、変動支払にストックオプションを含め、固定報酬の200%を上限とすること、変動支払に対する強制繰延メカニズムを導入すること、および不履行資産に相違が生じた場合に罰金を賦課することが定められています。

アメリカでは、2008年の金融危機後における国民の信頼を回復するためにドッド・フランク法が制定され、透明性を高めるとともに、過度のリスクテイクに報いないようにするため、報酬に関する措置を講じています。これには、役員報酬の特定の側面について株主に拘束力のない諮問投票権を付与する規定が含まれているほか、報酬比率開示が義務付けられています。EUはまた、加盟国に対し、報酬方針について拘束力のある、または諮問的な投票の権利を株主に付与することを義務付けています。

株主行動主義と規制措置を受け、インドの企業は報酬方針を見直すとともに、株主と積極的に関わり、より良いガバナンス慣行を採用すべく要件を強化しています。

ニューデリーとムンバイにオフィスを構える法律事務所S&R Associatesにて、サンディープ・バガット弁護士はパートナーを、ラヤ・ハザリカ弁護士はアソシエイトを務めています。

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ニューデリー: 電話番号 +91 11 4069 8000
ムンバイ:電話番号 +91 22 4302 8000
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